社会の仕組み、育ってきた環境、教育、メディアなど、さまざまな影響に縛られている私たちが自由な生き方に出会えるメディア「PRIME」。
We must be free!をテーマに、様々な女性のストーリーをご紹介するインタビュー連載「家族とキャリアと私」。ひとりひとりの人生にフォーカスし、女性のあらゆる選択と生き方を肯定する人気シリーズです。
目次
第6回目のインタビューを受けてくださったKさん
Kさんは4歳の息子をもつ、ワーママさん。
5回の転職を経験し、何回か自身のキャリアを見直すタイミングがありました。その中でも今なお、子育てと仕事を両立されている理由をうかがいたいと思い、今回インタビューに協力していただきました。
20代前半で子育てにイメージがついていない私は、「結婚や出産、子育ては仕事の邪魔」だと思っていました。しかし、このインタビューを通して、この固定概念が崩れました。結婚・出産・子育てに漠然とした負の感情を持っている女性の方々に読んでもらいたいです。
仕事をすることで子供との時間を目一杯楽しめる
ーこれまでどんなキャリアを歩まれてきたのですか?
美容関連の仕事にずっと携わっていますが、転職を5回繰り返してきました。
高校時代から美容系の仕事に携わりたいと思い、美容の専門学校を卒業後、4年間、美容部員として働いていました。その後、5年間、看護助手として美容クリニックに勤めていました。看護助手とは、針を使用する「医療行為」を行わない看護師というイメージですかね。出産後、クリニックを退職し、7か月ほど、自宅で育児と並行しながら美容ライターとして活動。その後、また違う会社のマーケティング部署で美容関係のアフィリエイト業務にあたっていました。そして、化粧品メーカーに転職して販売促進を担当。そこを退職後、今の会社では美容のマーケティング業務を担っています。
ー美容関連のお仕事をされている中で転職を繰り返し現場からデスクワークまで幅広く経験しているのですね。
そうですね、できれば一つの会社で働き続けるのがベストだと思いますが、勤務先に産休・育休制度が整っていなかったり、コロナによって業績不振になったりで転職を迫られました。
ー転職を迫られた時に「仕事を辞める」という選択肢はよぎらなかったんですか?
その選択肢はなかったですね。
産後、子育てに専念した時期がありました。でも子供が寝ている時間などを活用することで、自分のために使える時間が意外にあって、知り合いの紹介で、在宅でできる仕事をしていました。それが美容ライターの仕事です。その時、子育てに専念するより、仕事も子育てもしている方が自分の精神状態が良いことに気づきました。そこから、子育てに専念するという考えはなくなりましたね。
ーそうなんですね。では、もし経済的な余裕があったとしても仕事をする選択肢をとりますか?
もちろんです!
ー即答ですね!(笑)
はい(笑)
自分のためでもあるし、子供のためでもあります。
結婚前からある、美容に関する悩みを持つ女性を助けたいという気持ちを実現したくて仕事を続けています。それとは別に仕事をすることで子供との時間を目一杯楽しめるんです。仕事で子育てから離れる時間を設けると、一緒に過ごせる時間に限りがある分、子供との時間をより大切にできるんですよね。
仕方なく働いているわけでなく自分がやりたいから働いています。自分のやりたいことができているため子供とも良好な関係が築けます。
仕事を続けることが自分のためだし、それが子供のためにも繋がる。だからこそ仕事と子育ての両立という選択肢をとっているKさんの意思決定の背景が見えてきました。しかし、現在の日本では、「子育てと仕事の両立は大変」というイメージは拭えません。Kさんにも働きづらさを感じた経験はあったようです。
上司から言われた「子供が男の子で残念だったね。」の言葉
ー「子育てと仕事の両立」と聞くと、どうしても辛いイメージが先行してしまいます。具体的に辛かった経験はありましたか?
はい、職場の環境から感じる辛さはありました。化粧品メーカーの販売促進を担当していた時、周りの上司は子育てへの参加経験が乏しい男性の方ばかりでした。また、子育てを経験している女性の同僚もほとんどいませんでした。その中で、残業確定の業務を任されたり終業間際に重要な会議が入ってしまったりすることもありました。このため、常々「子育て中の女性にとって働きづらい職場だな」と感じつつ働いていた気がします。
それが決定的になったのは、息子が急に熱を出してしまい仕事を早退した時でした。後日、男性上司から「男の子は女の子と比べて小さい時の身体が弱くて大変だね、女の子の方が良かったんじゃない?子供が男の子で残念だったね。」と言われて…。時代錯誤だなと思いました。そこから、職場で子育てに関して共感を求めることは一切なくなりましたね。
ー大変な職場環境だったんですね。そんな職場環境だと私だったら辞めてしまう気がします。
でも辛いことばかりじゃなかったんです。仕事自体は楽しくて。所属していた販売促進部は私が入社してから設置されたのですが、設置前は本部と現場のコミュニケーションが上手くとれていなかったようなのです。でも私がその部署の担当になったことで、現場の美容部員とプライベートでも交流するような仲になり、今まで以上に本部と現場のコミュニケーションが円滑になったと思っています。現場から良いアイディアをヒアリングし、新商品や施策に活かすこともできました。長年憧れていた業務だったということもあり、仕事を通して大きなやりがいを感じていたので辞めようとは思いませんでした。
辛い環境の中でも仕事のやりがいをつくりだしているKさん。職場では子育ての辛さに対して共感を求めず強い意志をもちながら、仕事と子育てを両立している姿は本当にかっこいいと思いつつ、働く母親だけが、その負担を強いられている世の中は少しおかしいと感じました。
自分で自分の機嫌を取るために仕事をしている
ー仕事自体に楽しいという気持ちがあるからこそ仕事をし続けてるんですね!では、子供がいる中で仕事を続ける意味は何かありますか?
自分で自分の機嫌を取るために仕事をしています。
私は、お母さんの存在が家庭の雰囲気を大きく変えると思っています。私の場合、家庭という閉ざされた環境にいると、自分のできていないところばかりに目が向いてしまう傾向があると自覚しています。子供の成長にはその瞬間にしかない煌きのようなものが無数に存在していると思うのですが、子供と一緒にいることが当たり前の日々が続くことで、本来見逃せないはずの場面にどんどん鈍感になってしまって。子育てに対して「楽しい・嬉しい」というプラスの感情が減ってしまいました。その結果、自己嫌悪がどんどんひどくなりストレスが大きくなって、気持ちがネガティブになってしまうんです。その状態だと家庭も暗くなって子供にとって居心地が悪い家庭になります。だから、子供や家庭のために仕事を通して社会に触れることで自分の精神状態を保ってますね。
ー子供にとって居心地の良い家庭にするためにもお仕事をしてるのですね。
はい、子供が望む理想のお母さんで居続けたいと思っていますね。
ー良いお考えですね!Kさんが考える理想のお母さんとはどんなお母さんですか?
ただ笑顔でいるだけで家庭が明るくなるような存在が理想のお母さんです。そんなお母さんでいるために私には仕事が必要です。
Kさんは仕事自体にやりがいを見つけながらも、理想の家庭を実現するための手段としても仕事が機能しているのだと感じました。だからこそ、Kさんは仕事と子育ての両立を楽しんでいるのだと思いました。
一緒にいる時間が子供への愛情の大きさではない
ーKさん独自の働きながら子育てをする理由を見つけ出していて素敵だなと思いました。では、仕事と子育てを両立して良かったと思う瞬間はありますか?
子供と離れている分、子供と過ごす時間の濃度が濃くなったことです。時間が限られているので、「いつかやりたいな」と思っていることを「今やろう」という気持ちでいられます。他のお母さんよりも一緒に過ごす時間が少ないとしても、「いかに楽しく過ごせるか」についてきちんと考えて行動ができるようになった気がしています。放置したままのおもちゃもなくなりましたね(笑)
ー確かに子供といる時間をより大切できるのは分かるような気がします。一方で子供をずっと見守るのが母親の務めだという考え方もあると思います。その考え方についてどう思われますか。
その考え方も間違っていないですし、どちらが正解でもないと思います。でも、私は子供と一緒にいる時間の長さだけが子供への愛情の大きさではないと思っています。
我が家でも息子が保育園に通い始めたころ、環境に慣れず「ママと別れたくない」と泣いていたみたいです。でも今は保育園に楽しく通っていて、子供の成長は本当に早いなと感じています。だから、四六時中側に居られなくても、子供を信じることも愛情だと思っています。
働いているからといって子育てを疎かにせず息子さんと向き合われているのは素晴らしいと思いますし、憧れを抱きました。Kさんのような女性が声を上げることで20代女性の子育てに対するイメージも変わるのではないかと思います。
「ママになってもきれい」この言葉がなくなる社会へ
ーこれから社会に出て働く私からすると、Kさんのように仕事と子育ての両立をこんなにも前向きに捉えている女性がいることは励みに感じます。
今の日本だと、女性が長期的に仕事を続けようと思った時、その延長にある結婚や子育てに対して心から憧れられないですよね。キャリア形成などに関する不安はもちろん、「とにかく大変そう」という感情が先行する人の方が多いかと思います。でも、私はそんな感情がなくなってほしいと思っています。よく美容の宣伝文句として「ママになってもきれい」という言葉が出てきます。それって、「ママ=大変、疲れ切ってボロボロ」という固定概念があるからこその言葉ですよね。「パパになっても格好良い」なんてほぼ言われていないのに(笑)でも、ママになることは疲れることばかりではないですし、仕事と子育てをやっているからこそ得られる楽しさもたくさんあります。これから、社会に出る女性、結婚を控えている女性、妊娠予定の女性に、仕事と子育ての両立は大変なことばかりでは決してないし、楽しさもきちんと存在することを知ってほしいです。おしゃべりが上手になった子供と一日の終わりに「今日の楽しかったこと」を言い合う瞬間や、保育園で書いてくれた全然似ていない私の似顔絵を眺めていると、なんとも言えない温かい気持ちで胸がいっぱいになります。そのことを私のインタビューを通じて伝えられたらいいなと思い、今回のインタビューを受けさせていただきました。
Kさんのお話しを聞いていると、ママに対する潜在的な負のイメージがあることに気づかされました。そこに問題意識を持ち、今回のインタビューを受けてくださったKさん。Kさんのインタビューを通して勇気づけられる女性が一人でもいたらいいなと思います。
<編集後記>
働きながら子育てという道を進まれている、Kさん。
Kさん自身が仕事と子育ての両立に対して自分なりの意味を見出していて、社会人、そして母親としての人生を全うされているように感じました。
しかし自分の現状に満足するだけでなく、世の女性が仕事と子育ての両立に憧れを持てる社会にしたいという理想を持っていました。
Kさんのような女性が増えると、女性が結婚や出産、子育てに希望を感じる社会が実現できるのではないかと思いました。
取材・文:M.M
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