羽生結弦選手は美しい。
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— Olympics (@Olympics) February 10, 2022
2022年2月10日、北京五輪のフィギュアスケートで男子フリーが行われ、ショートプログラムで8位スタートとなった羽生結弦選手(ANA)は188.06点、合計283.21点で結果4位となった。前人未踏の4回転アクセルに挑むも転倒。94年ぶりの五輪3連覇には届かなかったが、世界は王者の挑戦を称賛した。
羽生選手が北京オリンピックで私たちに見せてくれた貫いた挑戦と美学。
「もう一生懸命がんばりました。これ以上ないくらい頑張りました。報われない努力だったかもしれませんが」
そうインタビューで話す画面の向こうの羽生選手の姿に、胸が締め付けられる。
報われない努力だろうか。残したものは大きい。
しかし、世界一という高みを知る人には、今日の結果は失敗なのだろうか。
今日、彼はクワッドアクセル(4回転半=4A)に国際大会で初めて挑戦した選手となった。
男子フリーで挑んだ4回転半のジャンプ。
羽生選手お馴染みのフリー曲「天と地と」が流れ、最初のジャンプに全てがかかっていた。
結果としては着氷できず転倒したものの、オリンピックで初めて公認のスコアに4Aが刻まれることになった。
1/4未満の回転不足ということで、ダウングレードではなく、認定されたうえでの回転不足。
つまり、失敗ではあるけれど公認のスコアに4Aが初めて刻まれたということだ。
そして羽生選手の挑戦は、オリンピックの舞台に刻まれ、そして歴史の扉をこじ開けたのだ。
それが「報われない努力」だったと言うオーディエンスは誰一人いないのではないか。
そして、あとの報道で、羽生選手はコーチもつけず、練習場所も満足に確保できず、夜中にリンクを借りひとり練習していた末に挑んだオリンピックだったと知った。
そんな中での歴史的偉業だったと知り、私はさらに感情の行き場を失い、震えた。
羽生選手に限らず、オリンピックを目指すような選手は誰もが心揺さぶるストーリーを持っている。
無論、羽生選手のストーリーもすごいものだ。
また、羽生選手は数多いるトップクラスの選手たちの中で、表現者としてもパフォーマンス力、完成度、見る者を惹きつける力、見る者に何か期待を与える力…その価値も改めて世界一だと感じた。
私はK-POPが好きなのだが、コロナ禍で話題を呼んだBTSも頂点を取るまでにとてつもなく劇的なストーリーを持っている。
そしてそれはファンの心を掴んで離さない。
彼らは今、何を歌って踊っても、すべてがそのストーリーの一部となって大きな世界観でオーディエンスを熱狂させる。
私はオリンピック選手とBTSが非常によく似ていると常々感じている。
どちらも長い年月のたゆまぬ鍛錬と下積みがあり、そこに個人やグループのストーリーが生まれる。さらに「競争」と「結果が全て」の厳しい世界に挑む姿が加わるからこそこれほどまでに人々を熱狂させるのだ。
しかし、羽生選手の持つこのストーリーの力はそれだけではない。
彼のストーリーは彼の美しく整理された言葉を通すことでさらにドラマチックなものとなり、私たちの心に届く。
羽生選手に思いを馳せ、
もしくは自分の持つ何かと重ね合わせながらー。
今日、また一つ世界中の人の心揺さぶるストーリーが生まれた。
「もう一生懸命がんばりました。これ以上ないくらい頑張りました。報われない努力だったかもしれませんが」
その言葉を聞いて、「そうだ」と思う人はきっといない。
前人未到の地で戦う彼の姿は、結果だけでなく、見る者一人一人にもそれぞれのストーリーを与えているはずだ。
<ライタープロフィール> タピオカあさみ
30代/K-POPファン歴16年/歌とダンスのエンタメが大好きで月イチでK-POPの海外公演に行くことが生きがい/仕事も子育ても自分の好きなことも全部諦めずに楽しい毎日を送ることが目標のワーキングマザー