「働く女性」がポピュラーになった現代。結婚や出産を経ても仕事を続け、家事や育児と両立している人も珍しくありません。
PRIME読者の皆さま、はじめまして。ライター・エッセイストのみくりや佐代子です。
作家活動の他に「OL」と「二児の母」の顔を持っています。
PRIMEは「働く女性のためのWebメディア」とあるので、読者の方々の生活と私の生活もきっとかけ離れていないはず。
忙しい日々の中でも、時間に追われるのではなく生き生きと過ごしていたいですよね。
今回は私が「キラキラしたワーキングママ」を諦めかけた過去と、自分らしい生き方を取り戻したきっかけを綴ります。
22歳で就職と結婚をほぼ同時に経験した私は、仕事と家事、そして育児に追われて目まぐるしい日々を過ごしていました。
自宅と職場と保育園をぐるぐるする毎日。最初は新鮮で楽しかった生活もだんだんと疲労が溜まっていきました。
特に苦労したのは「会社員」と「母親」の意識の切り替え。うまくスイッチングできないまま仕事での失敗を夜まで引きずり、子供の前でうまく笑えないことも……。
当時から強く感じていたことがあります。それは「女性に求められる役割が本当に多い」こと!
例えば、帰宅して大急ぎで夕飯を作ったり早起きして洗濯物を干したりしていても、そんな頑張りは「女性なら当たり前」と捉えられてしまい、めったに褒められることはありません。
一方で男性である夫は、保育園の送り迎えも食事の後片付けもしません。
「急に残業になった」「同僚とご飯を食べて帰る」「休みだから散髪に行く」など、自分の意志でその日の予定を決めるのは日常茶飯事でした。
不公平だなと感じつつも、私自身「仕方ない、妻であり母親なんだから」という思い込みがあったのも確か……。
こうして、過剰な責任感に強く苦しめられていったのです。
もう一つ私を苦しめたのは、他人と比較して生まれる劣等感です。
友人のSNSを覗くと、みんな部屋がピカピカで服もネイルもおしゃれ。
髪も肌も手入れが届いていたり、キャラ弁の写真が載っていたり。
最初は「いいなあ」と眺めていただけだったのに、次第に黒い感情に飲み込まれるようになりました。
「この人が海外旅行に行けるのは、旦那さんに何でも頼ってお金が自由になるからだ」
「この人のように時間が自由になるなら、私だってこのくらいの料理できるよ」
こうして、あっという間に憧れが嫉妬へと変わっていったのです。
このままじゃダメだ!嫉妬や劣等感から逃れたい!
そう思った私は早速「何をすればいいのか」を考えました。
料理本を買い、これまでの倍以上の時間をかけて料理をしたり。
使いこなせないデパコスを片っ端から買いあさって、一時間早く起きてメイクをしたり。
けれど改善されるどころかむしろ忙しさは増して、心はしんどくなるばかりでした。
ある時ふと気づきました。
「すること」のせいで時間が切迫するくらいなら「しないこと」を決めたほうが楽になるんじゃないか?
そう考えてまずやめたのは同僚とのランチでした。
というのも、毎日同僚とランチするときに上司の愚痴を聞いたり子育ての話題を出されるのがしんどかった……。
少しの時間でいいから静かな時間を確保したい。そう感じた私は、自分に正直になってランチタイムをひとりで過ごすようになりました。
そうして手に入れた休息時間。コンビニコーヒーを片手に、静かな場所で本を読むのが日課になりました。
「OL」でも「ママ」でもない、「私」に戻る時間。深呼吸を繰り返しリラックスした結果、仕事に戻る際もすっきりとスイッチングできるようになったのです。
それ以来、「しないこと」を決めていくことでストレスは大幅に軽減されました。
「友人のSNSを毎日チェックしない」、「こまめに育児日記をつけない」……。「しないこと」が増えると、自然と時間が生み出されます。
とはいえ、それが社会ですんなり受け入れられるかというと、それはまだまだ。社会には未だに「家事や育児は女性がやるもの」という認識が根強くあります。働く女性の負担は大きく、自分の時間を確保しづらいのが現状です。
今日もどこかに、仕事に家事に育児にと日々がんばっている女性はいるはず。
完璧を目指さなくてもいい。今のままで充分がんばっているのだから。「働く女性」がそんな風に声をかけ合える優しい世の中であってほしいと切に願います。
女性が楽に生きられる社会に必要なのは「完璧じゃない自分」を受け入れること。人を尊重し、相互理解を深めるために、まずは自分自身を許すことが第一歩なのだと感じます。
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